研究主題
自ら学び続ける子どもを育む研究(1/2年次)
~単元デザインの工夫と学びの自己調整を通して~
主題設定の理由
今日的な課題 学習指導要領の趣旨から
学習指導要領では、子どもの学習意欲の向上を重視しており、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たって、子どもが学ぶことに興味や関心をもち、見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげることが重要とされている。そして、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の実現のためには、学習効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを推進することが求められている。
また、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」においては、ICT等を活用しつつカリキュラム・マネジメントを充実させ、発達の段階に応じて、全ての子どもたちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実していくことが重要とされている。そして、授業改善を行う上で、学習の進め方(学習計画、学習方法、自己評価等)を自ら調整する力を身に付けさせることが必要であると考えられている。
北海道・十勝の現状から
北海道の子どもたちの実態として、令和6年度全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査(令和6年度全国学力・学習状況調査 北海道版結果報告書 – 教育庁学校教育局学力向上推進課)において、授業改善の項目である「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいましたか」の質問に対し、「当てはまる」と回答している割合は、令和5年度と比べて、小・中学校ともに低い。また、令和6年度の全国平均を下回っている。このことから、子どもが自ら考え、自ら取り組む授業づくりを構想する必要があるだろう。
加えて、令和5年度から行われている、北海道教育研究所連盟の第18次共同研究における研究内容(道研連概要 – 北海道教育研究所連盟)の1つに、「全ての子どもたちの可能性を引き出す『個別最適な学び』と『協働的な学び』」が設定されており、このことからも北海道全体で、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を取り入れた授業実践が必要だと考える。
さらに、十勝管内の小・中学校においては、令和6年度の校内研究の目的を「学びの自己調整」や「主体的に学ぶこと」とした学校が約4割となっており、多くの学校が自ら学習を進める子どもを育む必要性を感じている。また、十勝教育研究所が管内小・中学校を対象に実施したウェブアンケート(数字で見る十勝の教育🔑 – 十勝教育研究所)では、「個別最適な学び」や「協働的な学び」に関する授業改善を行っている教員の割合がおよそ9割と非常に高く、強い関心をもっていることもうかがえた。

「令和6年度の校内研究の目的」の割合


「設問1 学習指導において、児童生徒一人一人に応じて、学習課題や活動を工夫しましたか?」の割合
「設問2 学習指導において、児童生徒が、それぞれのよさを生かしながら、他者と情報交換して話し合ったり、異なる視点から考えたり、協力し合ったりできるように学習課題や活動を工夫しましたか?」の割合
今年度の研究の方向性
以上の状況から、自ら学び続ける子どもを育むことが重要だと考える。そこで、研究1年次は、教師が身に付けさせたい資質・能力を明確にし、子どもが多様な価値観で学ぶことができる単元デザインを作成し、学習計画を立て、子ども自身で自分に合った教材や学習方法、学習時間を判断しながら学習を進め、振り返りを通して学びを自己調整することで、自ら学び続ける子どもを育むことができるだろうと考え、主題を設定した。
研究の仮説と構造図
研究の仮説
単元計画において、教師が身に付けさせたい資質・能力を踏まえながら多様な価値観で学ぶことができる単元デザインを構築し、加えて、子ども自身が学習計画(見通し)を立て、学習方法など授業での学びを自己決定し、振り返りを通して学びを自己調整していくことで、自ら学び続ける子どもを育むことができるだろう。
研究構造図

研究の視点と内容
研究の視点
自ら学び続ける子どもを育む
学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の視点を以下のように示している。
① 学ぶことに興味や関心をもち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しをもって粘り強く
取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。
② 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考
えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。
③ 習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、
知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策
を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。
小学校及び中学校学習指導要領解説 総則編(平成29年7月)より抜粋
また、「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」(以下、令和3年答申)では、自ら学び、主体的に考え、多様な立場の学習者と協働しながら課題を乗り越える資質・能力の育成が求められている。
このような中で、子どもたちが生涯にわたり自ら学び続ける力を育むためには、授業の中で主体的に学ぶ場面を計画的に設定することが重要である。子ども自身が「見通しを立てる」「学びを振り返る」ことを通して自己の学びを深めることは、子どもたちが学びの必要感をもつきっかけにもなる。
加えて、令和3年答申ではICTを活用し、自らの学び方を調整しながら主体的に学ぶ力の育成が求められている。1人1台端末の利便性を最大限活用することで、学びのサイクルが習慣化され、子ども自らが学び続けられるようになると考える。
そこで、本研究では、北海道・十勝の子どもの現状を踏まえ、これからの予測困難な時代を生き抜く力を身に付けられるようにするため、目指す子どもの姿を「自ら学び続ける子ども」とし、以下のように定義することとした。
自ら学び続ける子どもの姿
○ 自ら学習計画を立てて学習に向かい、課題を解決しようとする姿
○ 各教科等の「見方・考え方」を働かせ、学習方法等を自己決定しながら学ぶ姿
○ 自ら学習を振り返り、次の学習や単元での行動を調整しようとする姿
単元デザインの工夫
単元デザイン(単元計画)においては、単元全体の学びの見通しを立て、ゴール(課題の解決)に向かって学びを深めていく構造を計画することが必要である。学習指導要領では、単元を見通して子どもが粘り強く学習に取り組み、振り返りを通して次につなげることの重要性が示されている。
主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たって、特に主体的な学びとの関係からは、児童(生徒)が学ぶことに興味や関心をもち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげることが重要になる
小学校及び中学校学習指導要領解説 総則編(平成29年7月)より抜粋
そこで、子どもが主体的に学びを進めるためには、まずは子ども自身が単元のゴールを理解し、その過程で何を学ぶのか見通しをもつことが必要であると考える。例えば、各教科等の指導に当たっては、単元の始めにゴールを提示又は作成し、子どもと共有する。その上で、子どもが学習の見通しを立てたり、学習した内容を振り返る機会を設けたりすることで、子どもたちが学びの進捗を確認し、学びを自己調整することが考えられる。
加えて、令和3年答申では以下のように示されている。
これまで以上に多様性を尊重し、ICT等も活用しつつカリキュラム・マネジメントを充実させ、発達の段階に応じて、全ての子供たちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実していくことが重要である。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)より抜粋
上記のように「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を図るためには、教師は目の前の子どもに合わせた多様な学習環境を提供する必要がある。この多様な学習環境として考えられるのは、学習方法や交流機会、交流方法などである。これらを教師主導で行わせるのではなく、子どもが自己決定しながら、自ら行うことができるような環境を整備することも必要だろう。
以上のことから、本研究では、ICTを活用し、単元デザインの工夫を図るために以下のようにまとめる。
本研究における「単元デザインの工夫」
○ 単元の始めに子どもとゴールを共有し、見通しを立てたり振り返りをしたりしやすくする。
○ 学習方法や交流機会など、子どもの多様な学び方に対応した学習環境を整備する。
学びの自己調整
「学びの自己調整」とは、自ら見通しを立て、行動し、振り返るなど、目標に向かって学習方法を選択しながら課題解決を能動的に進めることとされている。令和3年答申では、以下のように「学習の進め方を自ら調整」することなど、「自ら学習を調整」するという言葉が複数見られる。
小学校中学年以降 学習の目標や教材について理解し、計画を立て見通しをもって学習し、その過程や達成状況を評価して次につなげるなど、学習の進め方を自ら調整していくことができるよう、発達の段階に配慮しながら指導することが大切である。また、中学校以降において多様な学習の進め方を実践できる環境を整えることも重要である。
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)より抜粋
上記のように自ら学習の進め方を調整していくためには、子ども自身が授業の中で「見通しをもつこと」と「振り返ること」の学びのサイクルを身に付ける必要がある。学習指導要領でも同様に「見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方を考えたりする活動を行うこと」としている。
これらは、これまでの伝統的な「一斉授業」のよさを生かしつつ、子ども自らが学習方法を選択しながら多様な学び方を実践していくことを念頭に書かれていると考えられる。
したがって、本研究では学びの自己調整を以下のようにまとめる。
本研究における「学びの自己調整」
○ 子ども自らが見通しを立て、行動し、振り返る学びのサイクルを意識して行うこと。
○ ゴールに向かうための学習方法を子ども自らが選択・決定すること。
研究の内容
単元デザインの工夫
⑴ 身に付けたい資質・能力に応じたゴールの設定
本研究に当たっては、資質・能力の身に付け方について、「逆向き設計」論を参考にして、最終的なゴールを単元の始めに提示する工夫を行う。この「逆向き設計」論とは、身に付けさせたい資質・能力から逆向きに授業を設計し、また、指導が行われた後で考えられる評価方法を先に構想するものである。(参考「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会(第11回)配付資料」)これによる評価方法については、実生活に基づいたパフォーマンス評価(図1)と組み合わせることが効果的であるとされている。パフォーマンス評価については、十勝教育研究所令和3・4年度の共同研究も参考にしながら行う。こうした単元デザインを構築することで、子どもたちは明確な目標をもって学びに取り組み、自ら学びを調整していくと考える。

西岡加名恵『教科と総合学習のカリキュラム設計』図書文化、2016年、p.83参照
本研究では、これに加えて、単にゴールを共有するだけでなく、子どもによる個人内評価を促すために「学習計画(見通し)」を立てたり、授業での「行動」に対する「振り返り」の機会を設けたりすることで、子ども自身の変容を記録できるようにする。
「学習計画(見通し)」を立てたり、「振り返り」を行ったりするに当たっては、Googleスプレッドシートなど、ICTの活用が考えられる。これは、子ども一人一人が個人で振り返りを行うことよりも、他者参照を行いながら振り返りを行うことで、自分にはない気付きが得られることをねらいとしている。また、振り返りをうまく書けない子どもにとっては、他者の記述を参照しながら振り返りの形を学ぶことができる。
「振り返り」の内容については、2つの項目を用意する。
〇 今回の授業で身に付いた力。
本時における子どもの自己評価を行うことで、子ども自身の学びの自覚を促す。
〇 次に向けての改善点。
次の学習計画(見通し)につなげる振り返りを行うことにより、学びのサイクルの構築及び学びの自己調整につなげるとともに、メタ認知能力の向上を促す。
このようにICTを活用して「学習計画(見通し)」を立てたり、「振り返り」を行ったりすることで、子どもの意識の中に自然と学習サイクルが構築され、学び続ける子どもを育むことにつながると考える。
⑵ 子どもたちにどの程度学びを委ねるのか見える化する
ゴールを提示しただけでは、子どもたちの学びは深まらない。そこで、単元でどの程度子どもに学びを委ねていくのか、教師側が意図的に設定する必要がある。子どもに学びを委ねていくことは、主体的・対話的で深い学びに向けて教師が意図的に整備する学習方法の一つの手段であり、「教師は教えなくてもいい」 「全て子どもに委ねればよい」という誤った認識の下で行われないように注意したい。(「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会 論点整理」令和6年9月18日から一部抜粋)
学びの委ね方を見える化するために、今回は富山市立芝園小学校の実践例を参考に、子どもへ学びを委ねていく割合の数値化を行う。教師は、単元を計画する際に「学習課題」「学習過程」「学習形態」という3つの指標を意識しながら指導案を計画する。
「学習課題」……自分自身が興味・関心をもったことなど、自分で課題を決めていくこと。
「学習過程」……情報を収集し、整理・分析し、まとめ、それを発信していくこと。
「学習形態」……一人で学ぶのか、それとも誰かと一緒に学ぶのか自己決定すること。
また、子どもに学びをどの程度委ねていくのかについては、目の前の子どもの実態に合わせて行う必要がある。例えば、学びのサイクルがまだ身に付いていないと思われる集団については、教師側が学習の手順を丁寧に説明してから学びに向かわせた方が効果的だろう。一方で、ある程度学びのサイクルが身に付いている集団であれば、普段の学びから推測して授業内容を計画させてもよいだろう。このように、「学びの手引き」をどの程度示していくかは、教師と子どもの関わりの中で決定していくことが望ましいと考える。
学びの自己調整の工夫
自己調整学習を学びのサイクルに生かす
単元をデザインし、学びのサイクルを身に付けていく上で、自己調整学習という考えを踏まえる必要がある。本研究の副題でもある「学びの自己調整」については、市川 伸一(東京大学名誉教授)、篠ケ谷圭太(学習院大学文学部心理学科教授)両名による「学習の自己調整は日常的学習行動の中でどう促進されるのか―研究、実践、政策の動向と今後の展望―」にて、「教育界における『学習の自己調整』は、自己調整学習の研究を踏まえていることが明らかである」と示されている。
自己調整学習での中心的な考え方は、「学習者がメタ認知、動機づけ、行動において自分自身の学習課程に能動的に関与していること」を自己調整と定義し、そのようにして進められる学習を自己調整学習と呼ぶとされている。また、自己調整学習をする力の育成で重視すべきこととして、「学習の動機付け」や「学習方略」「メタ認知」といった言葉が存在する。
「学び(学習)の自己調整」=「自己調整学習」
〇 自己調整学習の中心的な考え方
・動機付け……教師から一方的に与えられた学習の課題、いわゆる「外発的な動機付け」だけでなく、教師
が提示する最初の教材や活動などをきっかけに、子どもが「調べたい」、「はっきりさせたい」
という「内発的な動機付け」から学び始めるように考えること。
・学習方略……子ども自らが学びを進めるための学習方法を身に付けること。また、一人一人の子どもが、
最善の自己選択、自己決定した方法によって学びを進められるよう、発達段階に応じた教
師による意図的・計画的な指導・支援を考えること。
・メタ認知……ふかん的に自己評価し、考え方や解決方法などの学びの方向性を調整し、その後の学習をコ
ントロールすること。自分の学びが順調か、あるいは停滞しているか、それならどうすべき
か、自分でよりよい方向に向かって学びの進路を考えること。
自己調整学習の考え方を踏まえ、「見通し」や「振り返り」を学びのサイクルに生かすため、ОECDの示すラーニングコンパスから「AARサイクル」を参考に、自ら学び続ける子どもを育むための学びのサイクルを意識付けていく。
「AARサイクル」
=「Anticipation-Action-Reflection」
(見通し) (行動)(振り返り)
- 「見通し」=今回の行動がどのような結果をもたらすか考えながら見通しを立てる。
- 「行動」=「見通し」に沿って学びに向かっているか、自分の行動に責任を自覚しながら行動する。
- 「振り返り」=「見通し」に沿って行動できていたか振り返るとともに、次の「見通し」のために今回の行動を振り返っている。
自己調整学習をAARサイクルに当てはめると、「見通し」の部分に「動機付け」、「行動」の部分に「学習方略」、「振り返り」の部分に「メタ認知」という言葉が当てはまるだろう。したがって、AARサイクルによる探究的な学びを身に付けていくことは、自己調整学習の考え方を身に付けていくことにもなっていくと考える。
そこで、本研究にあたっては、まず「見通し」にあたる動機付けでは、外発的動機付けだけでなく、内発的動機付けを促す課題の設定を行う。これは、単元のゴールを単元の始めに設定することで、子ども自らが「調べたい」「はっきりさせたい」と学びを進めたくなるような課題あるいは教材を用意する必要がある。
次に「行動」にあたる学習方略では、学びのサイクルを示した「学びの手引き」を、子どもの実態に合わせて提示・配布し学習指導や支援を行う。また、授業計画表などを作成し提示することも、子ども自身に学習方略を身に付けさせる方法の一つだと考える。
最後に「振り返り」にあたるメタ認知では、単元デザインの工夫でも触れた通り、2つの項目を設定し、子どもが自問自答することでメタ認知する能力を育て、子ども自ら学習を調整する力を養う。
このように、それぞれの考え方を大切にしながら、学びのサイクルに組み込み繰り返すことで、子ども一人一人が自己調整スキルを身に付け、自ら学び続ける子どもを育むことにつながると考える。
研究計画
⑴ 第1年次(令和7年度)
① 研究主題、仮説、内容等の検討
② 理論研究
③ 共同研究員による実践検証(中学校)
④ 研究の中間まとめと研究紀要の公開
⑵ 第2年次(令和8年度)
① 研究仮説、内容、計画の修正
② 理論研究
③ 共同研究員による実践検証(小学校)
④ 研究のまとめと研究紀要の公開
検証計画
⑴ 検証内容
① 単元デザインの工夫
身に付けさせたい資質・能力を基に教材を吟味し、子どもが多様な価値観で学ぶことができる単元デザインを構築することにより、自ら学び続ける子どもの姿につながっていたか。
② 学びの自己調整の工夫
身に付けさせたい資質・能力を基に課題を設定し、子ども自身が学習計画(見通し)を立て、自分に適した教材や学習方法、学習時間を選択しながら学習を進め、学びの過程や変容を振り返りながら学びの自己調整を行うことで、自ら学び続ける子どもの姿につながっていたか。
⑵ 検証方法
① 単元デザインの工夫に関わって
・共同研究員による子どもの見取り(発言、つぶやき、行動等)
・ワークシートの内容等の分析
・事前、事後のアンケート調査
② 学びの自己調整の工夫に関わって
・共同研究員による特定の子どもの見取り(発言、つぶやき、行動等)
・ノートやワークシート等による子どもの振り返りの分析
・事前、事後のアンケート調査
研究の推進
○ 本研究は、十勝教育研究所と管内各市町村研究所が一体となり推進するものである。
○ 管内の子どもたちの実態を踏まえた研究仮説を基に、理論研究や実践検証を進める。
○ 共同研究員は1つのグループで、推進幹事、副幹事を選出して、協議を重ねながら実践検証をする。
○ 幹事は、グループ研究の中心となり実践検証を推進し、副幹事はそれをサポートする。
○ 十勝教育研究所は共同研究員と協議し研究を総括する。また、研究推進に関わる文献、資料等を提供する。
○ 共同研究員による研究実践の成果を広く管内に提供する。
研究の組織
| グループ | 研究1年次グループ | |
| 学年・教科 | 中学校第2学年・社会科 | |
| 推進幹事 | 永山 凜(陸別町立陸別中学校) | |
| 推進副幹事 | 土橋 真理(中札内村立中札内小学校) | |
| 授業者 | 田村 陽和(大樹町立大樹中学校) | |
| 共同研究員 | 戸川 結(音更町立緑南中学校) 加藤 心(士幌町立士幌町中央中学校) 長谷川知英(上士幌町立上士幌小学校) 梅原 翔太(鹿追町立鹿追中学校) 朝日 誠(新得町立屈足中学校) 山内 優萌(清水町立清水中学校) 渡邊 優美(芽室町立芽室西中学校) 原田 憲未(更別村立上更別小学校) | 窪 駿一(広尾町立広尾中学校) 遠藤 宏一(幕別町立札内中学校) 小山内美咲(池田町立池田中学校) 小野 泰雅(豊頃町立豊頃小学校) 佐藤 法士(浦幌町立浦幌中学校) 下前 滋史(本別町立勇足中学校) 岸山 知歩(足寄町立足寄小学校) 木下ことみ(帯広市立帯広第五中学校) |
| 担当所員 | 山本 由佳 佐藤 悠樹 中村 俊太 | |
研究推進計画(令和7年度 1/2年次)
| 月 | 研究の推進内容 | 諸会議 |
|---|---|---|
| 4 | ・研究主題、研究計画の作成 | ・十勝教育研究所業務計画会議 |
| 5 | ・研究の視点、研究推進の方向性の確認 | ・十勝管内教育研究所連絡協議会総会 |
| 6 | ・共同研究員の委嘱 ・研究概要の説明 ・グループ分け、幹事・副幹事・授業者の決定 ・実践研究の内容、方針等の検討 | ・第1回共同研究員会議(6/3) (全体会議) ・第2回共同研究員会議(6/19)【Zoom】 (推進幹事・副幹事・授業者会議) |
| 7 8 9 10 11 | ・理論研究 研究1年次グループ ↓ 実践計画 内容検討 ↓ 授業実践1 授業実践2 授業実践3 ↓ 実践の成果と課題のまとめ ・理論研究・研究の経過報告 ・研究紀要原稿の検討・集約 | ・第3回共同研究員会議(7/8) (全体会議) ・第4回共同研究員会議(8/21) (全体会議) ・第5回共同研究員会議(10/9) (授業実践1・全体会議) ・第6回共同研究員会議(10/23) (授業実践2・全体会議) ・第7回共同研究員会議(10/28) (授業実践3・全体会議) ・第8回共同研究員会議(11/6)【Zoom】 (全体会議) |
| 12 | ・研究紀要の作成 ・研究発表大会スライド作成 | |
| 1 | ・研究紀要の作成 ・研究発表大会に向けての最終打合せ ・研究発表大会リハーサル | ・第9回共同研究員会議(1/15)【Zoom】 (推進幹事・副幹事・授業者会議) ・第10回共同研究員会議(1/27)【Zoom】 (授業者・推進幹事・副幹事会議) |
| 2 | ・研究発表大会(2/3) ・研究紀要の完成、HP掲載 |
授業実践
指導案(枠)と研究内容の検証(枠)
単元計画及び指導案

授業記録
授業実践1
授業実践2
授業実践3
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研究内容の検証
研究のまとめ
研究の内容1 単元デザインの工夫
単元の始めに子どもとゴールを共有し、見通しを立てたり振り返りをしたりしやすくする。


まず、単元の学習を始めるにあたり、「逆向き設計」論に基づき、パフォーマンス課題やルーブリック、目指すゴールの姿を子どもたちと共有した。これは、学習指導要領の指導項目や身に付けさせたい資質・能力を根拠に考えたものである。
子どもたちは、これらを頼りに、作品の作成時に必要になる情報を集めたり、各時間の学習計画を立てたり、振り返りを行ったりした。
これまでの授業よりも、単元が最後まで見通しやすくなったことで、子どもたちも安心して授業に臨めるようになった。
加えて、教師としても、ゴールを明確にすることで授業内容を考えやすくなり、指導のしやすさも向上した。

○ アンケート
① 単元の始めに学習の目標や、これから何をどのように学
んでいくのか、全体の流れをイメージすることができまし
たか。
② 自分で学習の計画を立てて、それに沿って学習を進めよ
うとすることができましたか。




1 そう思う / 2 どちらかといえばそう思う / 3 どちらかといえばそう思わない / 4 そう思わない
①のアンケートでは、事後アンケートで全ての子どもが肯定的な回答をしている。これは、本研究の目標である「単元の始めに子どもとゴールを共有し、見通しを立てたり振り返りをしたりしやすくする」という単元デザインの工夫が、単元の全体像を子どもが把握する上で非常に効果的であったことを示している。
②のアンケートでも、事後アンケートで95%の子どもが肯定的な回答をしている。これは、単元のゴールが明確になったことにより、子どもがゴールに向かうための学習計画を立てやすくなったり、学習方法など授業での学びを自己決定しやすくなったからではないだろうか。
○ 子どもへのインタビュー

授業の流れが分かると、今回の授業はどういう感じで進めていくのかが分かるので、自分でどの作業をすればいいのかが分かってとてもやりやすかった。
ゴールが分かっていると、自分でゴールに向かおうとする気になれるので、やる気が上がるし、そのゴールに向かっていける面白さもある。



学んだ後に、自分がどんな状況になったらいいのかな、というのが目に見えて分かるので学習の仕方が工夫しやすいなと思った。
面白さでいったら、自分でまとめたり興味をもったことをすぐ調べたりできるのが、今やっている「ゴールを最初に共有して自分の表現の方法を選べる学習」と「そうでない学習」の違いであり、今回の学習は楽しい。



自分は一から全部指示された方が活動しやすいので、目標や授業の流れ、何からやっていくかを言われた方がやりやすいと思う。
普通の授業でまとめることがあまりない中で、社会科ではまとめ作業があるから、自分の意見なども取り入れられるし学んだこともまとめられる。自分は楽しいし、面白いなと思う。
インタビューの内容から、ゴールが明確になることで、子どもが内面から「自分でゴールに向かおう」という前向きな学習意欲をもつことができたことが分かる。また、授業全体の流れが見通せるようになり、自ら学習の進め方を工夫し、計画的に取り組むといった学びを調整する姿も発言からうかがえる。
さらに、明確な指示を好む子どもに対しても、学習の見通しという安心感を与えつつ、最終的には、パフォーマンス課題で自分の考えを表現できる場を提供するため、様々な子どもの学習スタイルに対応する効果も確認できた。
以上の結果から、単元の始めにゴールを共有することで、子どもたちの学びの道筋が明確になり、学びやすさが向上したと考えられる。加えて、子どもたちがゴールに向けて見通しをもった活動を行うことによって、学習意欲の向上につながったと考えられる。
そして、この取組が、主体的に学ぶことの基盤づくりにも有効に機能したといえるのではないだろか。
学習方法や交流機会など、子どもの多様な学び方に対応した学習環境を整備する。




子どもたちの学びが自分のものとなるように、ICT等を活用した学習環境の整備を行った。教師が作成したGoogleサイトに、学習計画や振り返りを行うためのスプレッドシートのリンクを貼付したり、授業で使用したスライド資料を貼付したりすることで、子どもたちが自分で学びを進めることができるようにした。
また、タブレット端末は提示された課題を解決するための知識を補うことのほかに、知りたいことや深く掘り下げたいことなど、個人の興味・関心に基づいた主体的な活動に使用されていた。


○ アンケート
③ 課題解決に向けて、自分に適した学習方法を選択した
り、交流のタイミングや方法を自分で決めたりすること
ができましたか。
⑤ タブレットは、学習計画を立てたり、調べものをした
り、自分の考えをまとめたりする上で、役に立ちました
か。








1 そう思う / 2 どちらかといえばそう思う / 3 どちらかといえばそう思わない / 4 そう思わない
アンケート③では、事後に肯定的な回答が増加している。交流の仕方やタイミングを自分で決める場面が増えることは、子どもが自己決定する機会がより多く保障されることにつながり、学びやすさにつながったのではないだろうか。
アンケート⑤では、事前アンケートの時点で肯定的な回答の割合が高かったが、事後においては100%肯定的な回答が得られた。これは、それぞれの子どもの学びに対応するためにICT等の整備をしていった結果、子どもたちにも使いやすさが浸透したことが理由として起因していると考えられる。また、本授業実践では「学習計画」や「振り返り」もスプレッドシートを使用しているため、学びの大半でICTを利用していた。このことも、子どもの中でICTの有用性が浸透した要因といえるだろう。
○ 子どもへのインタビュー



自分に合ったやり方で調べたりまとめたりできるし、分からないところがあれば友だちや先生に聞くなどしながら、自分で進められるのでいいと思う。
タブレットがあれば、先生が他の子のところに行っているときに、自分で教科書に載っていないところを調べられるので、とてもいいなと思う。



自分に合った学習の仕方が選べるので学びやすいなと思った。
授業で今回のようなスライドを作成するときもそうだが、調べる作業では必ずタブレットを使う。授業中に疑問が多く出てくるが、いちいち先生に聞くと先生も困るし他の人にも迷惑が掛かる。そう思うときはタブレットを使って自主的に調べることができるので、その点で学びやすい。



一人で集中して取り組むより、友達と相談して取り組む方が自分には合っているので、選択肢があるのがいいと思う。
教科書や資料集、地図帳を見て調べるというよりは、タブレットで自分の知りたい情報だけ調べられるというのがやりやすい。タブレットは詳しく書かれていることが多いので、先生に聞かなかったところも、分からなければすぐに調べられる。見返すときにも振り返りを見ながらでき、例示されたスライドも自分のスライドと比べることができたので学びやすかった。
インタビューから、子ども自身が自分に合った学習方法や交流形態を選べることにより、学びやすさや学習への満足感が高まったことが分かる。また、ICTの活用によって、疑問が生じたときに自分自身で情報を収集し、学習を途切れさせることなく主体的に進められるようになった。さらに、ICTの活用は、学んだ内容を振り返る機会や他者の成果物を参照する機能を通じて、子どものメタ認知能力を高めることにつながったことがうかがえる。
学習環境の整備を意識することで、子どもは自分のペースやスタイルで効率よく学習できるようになり、課題解決に向けて主体的に学ぶ姿が見られた。ICTの効果的な活用によって必要な情報を迅速に得ることができるようになったことも、主体的に学ぶことに大きな影響を与えていると考えられる。
以上のことから、学習方法の選択肢を用意したり、交流形態を自ら選んだりすることにより、学びやすさや学習意欲の向上に効果があったことがうかがえる。また、学習環境を整備し、他者参照を行えるようにすることや自分自身の学びを客観的に振り返る機会をもつことで、メタ認知能力を高めることができたと考えられる。さらに、子どもにとっては、ICTは自らの学び足りなさを補う道具になり、そこに主体的に学ぶ子どもの姿を見ることができるだろう。
研究の内容2 学びの自己調整の工夫
子ども自らが見通しを立て、行動し、振り返る学びのサイクルを意識して行うこと。




子どもたちが自ら見通しを立て、行動し、振り返るなど、目標に向かって学習方法を選択しながら学びを能動的に進めることを支援するために、上にあるようなスプレッドシートを用意した。これには、「学習計画(見通し)」「本時で学んだこと、疑問点など(行動の振り返り)」「次の学習に向けての改善点(次への振り返り)」の3つの項目を用意し、AARサイクルの考え方を生かした形にした。
教師は、このスプレッドシートから子どもの進捗状況や理解度を判断し、全体に必要なフィードバックなどを考えて声掛けすることもできた。


○ アンケート
⑥ 授業の途中や終わりに、自分が「できるようになったこ
と」や「分かったこと」、また「次に向けて頑張りたいこ
と」などを、振り返ることができていましたか。
⑦ 振り返りで考えたことをもとに、次の学習のやり方を工
夫したり、新たな目標を考えたりすることにつなげること
ができていましたか。








1 そう思う / 2 どちらかといえばそう思う / 3 どちらかといえばそう思わない / 4 そう思わない
アンケート⑥では、事前段階でも肯定的な回答が77%と高い割合だったが、事後段階では94%となり、子どもたちが意識的に振り返りを行ったことがうかがえる。これは、振り返りを「行動の振り返り」と「次への振り返り」の2つに分けたことで、振り返りの質が向上し、以前よりも明確な振り返りが行えるようになったことが要因だと考える。
アンケート⑦でも、肯定的な回答が増加した。これも、今までの振り返りではなく、「本時で学んだこと、疑問点など(行動の振り返り)」と「次の学習に向けての改善点(次への振り返り)」と項目を分けたことにより、より明確に次の学習計画につなげていく意識的な振り返りができるようになったことによるものと考えられる。
○ 子どもへのインタビュー



今日は割と計画通りに進めたと思う。計画とズレたときは、友達のサポートをもらいながら修正して計画通りに進められるように頑張っている。
振り返りは、今日、自分が授業を受けて「どんなことをした」とか「どんなことを学んだ」とか「何ができなかった」とかを書いて、次の授業では「ここを新たに頑張ってみよう」とか「前回できなかったところをできるようにしよう」と思って頑張って書いている。



学習計画を最初に立てたが、やはり計画通りに進むような都合のいいことはあまりなく、計画通りに進む方が自分の中では珍しい。計画とずれたりうまくいかなかったりしたときは、なるべく計画した通りに軌道を戻すことができるように工夫したり、できなかった部分を家でやったりするようにしている。今日は九州地方の気候についてまとめるというところまではできたから、普段と比べたら計画に沿ってできていたと思う。
振り返りはうまくできたときを基準にして、「今日はどうだったかな」と考えるようにしている。書いた振り返りは次の時間に「前回こうなってしまったからこうしてみようかな」と変えることに役立っている。



いつも学びのサイクルとして、始まる前に計画を書く。計画通りに進められることもあるが、計画とズレたときは先生が例示したスライドを確認して自分のものと比べて修正するようにしている。今日は北海道地方の魅力を1つしかまとめられなかったので、もう少したくさん効率よく進めたかったというのはあったが、時間がなくてそこまではいかなかった。
振り返りで「今日できなかったこと」や「前回できなかった点」を次の時間に生かせたり、友達と交流して「こうした方がいいな」と思うところを次の授業で実践したりすることができるので、頭で考えるのではなくまとめることに意味があると思う。「次回こうしたい」というところを詳しく書いて、次回につなげられるようにしている。
インタビューから、単元デザインの工夫によって意図的に設定された学びのサイクルが、子どもの主体的な学びを促すような効果があることが分かった。
ただし、子どもの言葉に「計画通りに進む方が自分の中では珍しい」とあり、学習計画通りに進むことは少ないとしている。しかし、インタビュー内容全体から考えると、子ども自ら学習計画を設定し、学習方法を調整し、そして次の行動へとつなげるという「自ら学び続ける子ども」に求められる主体的な資質・能力を実践的に育成していると言える取組だったのではないだろうか。
以上の結果から、子どもが学びのサイクルを意識的に回し、振り返りを通じて自分の学習の進捗や課題を把握したり、次の学習の目標を立てたりすることで、振り返りが自然とメタ認知を促し、効果的に機能したと考えられる。
また、学習計画通りに学習が進まない場面でも、自分で軌道を戻すように工夫したり、友達のサポートを得ながら計画を修正したりするなど、主体的に学習を調整することにもつながったと考えられる。
ゴールに向かうための学習方法を子ども自らが選択・決定すること。




子どもたちの学びが「内発的動機付け」から始まるよう、パフォーマンス課題にはリアルな状況(現実の場面や必要感のある課題のこと)を生み出す工夫を行った。
子どもたちに「地域おこし協力隊」という立場を与え、メリット・デメリット両面を自然環境と結び付けながら考えるというパフォーマンス課題を提示した。しかし、これだけでは「外発的な動機付け」の側面がまだ残るため、子どもたちが「自分だったら」という意識をもって取り組むことに重点をおいた。
ただし、全て自由に思考するというわけではなく、教師側からスライドを例示したり、「教科書資料を2つ以上使用すること」「自然環境とその他の事象を結びつけること」などの条件を加えたりした。これは子どもの主体性を制限するものではなく、社会科が苦手な子どもを支援する役割と、教科書を基にした基礎的・基本的な学習内容を保障する役割がある。
その中で、子どもたちは地域のメリット・デメリットを自分たちなりに取捨選択し、スライドにまとめて発表を行った。


○ アンケート
③ 課題解決に向けて、自分に適した学習方法を選択した
り、交流のタイミングや方法を自分で決めたりすること
ができましたか。
④ わからないことや難しい問題があったとき、どうすれば
解決できるかを自分で考え、行動に移すことができていま
したか。(例:友達に聞く、先生に相談する、本やタブレッ
トで調べるなど)








1 そう思う / 2 どちらかといえばそう思う / 3 どちらかといえばそう思わない / 4 そう思わない
アンケート④でも、肯定的な回答は84%(事前)から95%(事後)へと向上している。この結果は、子どもたちが学習中に困難に直面した際、教師の指示を待つことなく自ら解決策を考え、主体的に行動することができるようになったことを示している。
また、先に触れたアンケート③の結果についてもこの部分と関わると考える。
これらのアンケート結果に見られる肯定的な意識の変容は、「ゴールに向かうための学習方法を子ども自らが選択・決定すること」という工夫が、「学びの自己調整」の要素のうち、特に「行動(学習方略)」の側面に影響を与えたためだと考えられる。
○ 子どもへのインタビュー



以前は人に聞くことができず自分で解決しようと頑張っていたが、今回は友達に聞いたり自分で調べたりして取り組むことができた。
調べたり、自分でまとめたりするときにやり方が分からない場合も、以前は自分で頑張ろうとしていたが、今回は友達にアドバイスをもらって取り組むことができた。



以前は、「うまくいかない」「分からない」といったときにすぐに調べることはしていなかったが、最近は分からないことやうまくいかないことがあれば先生にどうしたらいいか聞くようになった。
以前よりも学習意欲が高まり、学習に積極的に取り組むようになった。



今までは自分が分からないと感じたときに先生に聞くこと、友達に話しかけることが多かったが、タブレットを使って学習できるスタイルでは自分から調べて知識を得られたので、誰かに聞かず自分で行動できる点で、以前よりよくなった。
インタビューから、子どもたちは課題解決のための行動の選択肢を増やし、状況に応じて柔軟に行動できるようになったことが読み取れる。
また、ICTを活用することで、教師や友人に頼る前に自分自身で情報を収集する学習方法を身に付けられたことが分かる。このことは、同時に、「知りたい」「考えたい」という「内発的動機付け」から学びが始められるようになったとも言えるだろう。
さらに、学習方法の自己選択においては、教師や友人からの助言を積極的に求め学習を効果的に進められるようになったことで「以前よりも学習意欲が高まり、学習に積極的に取り組むようになった」という意識の変容につながったことが分かる。
以上のことから、ゴールに向かうための学習方法を子ども自らが選択・決定することは、子どもが学習を進めるための具体的なやり方(学習方略)を身に付け、同時に学習への内発的動機付けを高め、主体的に課題解決に取り組むなど、学習意欲を向上させることにつながると言えるだろう。
このことは、自ら学び続ける力を育む姿勢を身に付けるための重要な基盤となったと考えられる。
自ら学び続ける子どもを育む
「単元デザインの工夫」と「学びの自己調整」という2つの視点から考察した上で、最終的に「自ら学び続ける子どもを育む」ことができたかを考えていく。「自ら学び続ける」子どもの姿として挙げた姿は以下の3点である。
自ら学び続ける子どもの姿
○ 自ら学習計画を立てて学習に向かい、課題を解決しようとする姿
○ 各教科等の「見方・考え方」を働かせ、学習方法等を自己決定しながら学ぶ姿
○ 自ら学習を振り返り、次の学習や単元での行動を調整しようとする姿
○ アンケート
⑧ 単元の課題解決に向けて、見通しをもって粘り強く取り
組むことができていましたか。
⑨ 自分の学習の進み具合を確認し、必要に応じて学習方法
や計画を見直したり、家庭学習を行ったりすることができ
ていましたか。








1 そう思う / 2 どちらかといえばそう思う / 3 どちらかといえばそう思わない / 4 そう思わない
アンケート⑧では、肯定的な回答が、事前から事後へと大きく向上した。これは子どもたちが明確な単元のゴールと見通しをもって課題解決に積極的に取り組み続けた結果であると考えられる。この粘り強さの向上は、学習の必要感や内発的動機付けを持続できたことを表しているとも言えるだろう。
一方で、アンケート⑨では、62%(事前)と63%(事後)で、「思う」「思わない」の割合としてはほとんど変化が見られなかった。このアンケート⑨は、学びのサイクルの中で学習の状況を「メタ認知」し、自己の学習方法や計画の修正、家庭学習の実施など、具体的な行動に結び付けるという複雑で難易度の高い姿勢を問うものである。先に触れたアンケート⑥(振り返りについて)の結果と比較して考察すると、子どもたちは振り返り(メタ認知)自体はできたものの、その振り返りの結果を基に、主体的に学習計画全体を修正したり、計画の一環として家庭学習を組み込みながら軌道修正を行う力には更なる成長の余地があると考えられる。
○ 子どもへのインタビュー



最初に立てた計画に向かって自分の力で頑張ろうという気持ちになることができた。
勉強することは「やりたくないけどやらされている」というイメージがあったが、今回は自分から学習を進めたり調べたりして、「勉強はやらされるものではなくて自分でやるものだ」というイメージをもつようになった。
他の授業でも学習の最初に計画を立てることで、「今日はどのように学習するか」が分かる形で生かせる。やり方を選ぶことについては、何通りものやり方から自分に合った方法を選ぶことができると思う。振り返りは、他の教科や運動について自分で考えることができるので、今後に生かせそう。



何かをまとめる作業で、前は周りの人に「これどうやるの?」と頻繁に聞いていたが、今回は自分一人の力で分かりやすく工夫してまとめることができた。
学ぶことは今まで「やらなきゃいけないもの、仕方ない」と思っていたが、自分からやるようになったことで、「やらされてる」「仕方ないもの」と感じないようになった。
計画を立てるという部分は常日頃の生活の中でスケジュールを組むことに生かせる。振り返る・やり方を選ぶというのは自分に合った方法を探せるので、運動の練習法を変えるときなどにも使えそう。



学びのサイクルで最初と最後に計画立て・振り返りを行うことで、自分の目標に向かって作業できるので、先生に聞かず自身で調べたものをまとめることができ、自分の力で行動できるようになったと感じた。
勉強が好きではないので「やらされるもの」という考えが抜けないが、今回のように学習スタイルを選べることで、友達と話しながらやることができ、「楽しいな」「社会科楽しみだな」と授業を楽しめる考えに変わった。
3年生では修学旅行や行事があるが、今回学んだスライド作りの工夫や計画立て、選んで学習する方法を、来年や今後に活用してやっていけそうだと思う。
インタビューの内容から、学びのサイクルを回すことで、子どもたち自身が「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を実感しながら学習に向かうことができたと考えられる。また、子どもたちが自ら学習方法を選択することで、学びに対して前向きになれたり、楽しいと感じられたりするようになったことが明らかになった。加えて、今回の研究内容が、社会科のみならず他教科の学習においても汎用性が高いと感じていることも分かった。
以上のことから、「自ら学習を振り返り、次の学習や単元での行動を調整しようとする姿」については、やや課題が残るものの、「自ら学び続ける子どもの姿」として挙げていた3つの姿は、概ね実現できたと考える。
共同研究員の声
- 単元の始めにゴールを共有し、子どもが見通しがもてるようになることで、導入段階で学ぶ知識が今後の授業でどのように生かされるのかが見え、知識定着の段階での学習意欲にもつながると感じました。
- 単元の初期に「目指すゴール」を共有したことで、教師と子ども双方が学びの方向性を意識しやすくなり、授業中に立ち返る軸としての役割を果たしていたように思います。また、資質・能力を基盤としたゴールを設定することで、教材や活動の手立てがより具体的に検討され、授業の質が高まると感じました。加えて、子どもの実態に応じて手立てを柔軟に調整できる設計となっており、今後の授業改善や個別支援にもつながると思います。
- 先にゴールを示したことで、地域の特色を学ぶことに目的が生まれ、単に調べて覚える学習よりも、学びに深まりが生まれたと思います。
- 多様な価値観で学ぶことができるようにすることで、子どもが様々なアプローチの仕方で目標に迫ることができていたのではないかと感じました。学習方法を自分で選択したり、友達と交流したりすることや、活動内容を自己決定することで、より主体的に取り組んでいたと思います。
- 学び方が限定されないことで、より意欲的に学習に取り組んでいたと感じました。「他の人はどのように学んでいるのだろう」と他者と自分の学び方を比較する視点を得ることができていました。
- 振り返りを行うことで、今日の授業を自分が理解することができたか再認知することができ、その後の家庭学習の取組にもつながったのではないでしょうか。また、見通しを立てるという点では、インタビューにもあったように日常生活への力を付けていくという意味でも効果があると感じました。
- 学びのサイクルについて、1回目と2回目を比較すると、振り返りのスピードにおいて明らかな変化が見られました。特に、自己の目標・成果・今後に向けた視点の3点について、2回目ではより短時間で整理し、言語化する姿が見られ、経験の積み重ねが子どもの内面に影響を与え始めていることが感じられました。振り返りの枠組みに慣れ、学びの見通しをもつことが、自己調整力の育成につながると感じました。また、学びのサイクルを繰り返し実施することで、子ども自身が「前回との違い」や「自分の成長」に気付くきっかけにもなると考えます。その一方で、慣れによって取組がおざなりになる場合もあるので、必要に応じてフィードバックをしていくことが大切だとも感じました。
- パフォーマンス課題において、北海道地方か九州地方を自己選択できることで学習計画(見通し)をもって活動に取り組むことができていました。ただし、振り返りの内容にはパフォーマンス課題やルーブリックの内容に沿わず、授業の理解度、スライドの完成度に終始してしまい、どのような力が付いたかなどの資質・能力を振り返ることができない子どももいたように思います。
- 振り返りを通して、自分は今何が理解できていて、何が理解できていないのかといった「自身の学びへの理解度」が向上し、学びを整理することができるようになったと感じました。さらに、次に自分は何を意識して取り組めばよいのか明確になったことで、行動を起こしやすくなったと感じました。
- 指示された活動のみを行ったり、授業のためだけに学んだりするのではなくなったと感じます。パフォーマンス課題に沿って、メリット・デメリット両面をプレゼンしなくてはならないので、自分が主体となって調べたりまとめたりすることができていたと思います。




共同研究を振り返って(推進幹事・推進副幹事・授業者から)


陸別町立陸別中学校・永山先生(推進幹事)
授業づくりと授業実践を間近で見ていて、単元のゴールを子どもと共有することは特に有効だと感じました。常にゴールを意識して活動することで、「今自分はどのくらいの到達度にいるのか」が子ども自身にとって明確になり、何のために活動しているのかということが常に意識できる点は、子どもの主体性向上に寄与していたと考えます。「自ら学び続ける子ども」が実現できたかはまだ分かりませんが、今回の授業の中で「自ら学ぶ子ども」の姿は確かに見られました。様々な情報に幅広くアクセスし、学ぶチャンネルが多様であることを認識することが、「自分自身で学び続けられるんだ」という意識につながっていくのだと思います。
中札内村立中札内小学校・土橋先生(推進副幹事)
小学校でも取り入れられる要素は多いと感じました。ただし、特に有効であった学習計画と単元のゴールの共有については、中学校の実践事例を生かしつつも、視覚支援や自己決定・自己選択など、小学校レベルでの働き掛けが必要になると感じています。その上で、子どもの学習手段の多様化や調べ方の習得など、自己調整をするための土台作りについて小学校低学年の段階から取り組んでいくことが重要ではないでしょうか。また、振り返りについては小学校でも丁寧に行っていくことが求められており、比較的時間にゆとりのある小学校においても適切で実効性のある方法を考えていきたいと思います。




大樹町立大樹中学校・田村先生(授業者)
「自ら学び続ける子どもを育む研究」と聞いたときには難しさを感じましたが、実際に単元デザインや学びの自己調整を意識した授業を行うことによって、学習内容を日常生活と関連付ける子どもや学習計画を休み時間に確認して話し合う子どもの姿も見られるようになり、子ども自身が社会科に対する興味・関心を深めていく様子がうかがえました。これまでの教師主導型の授業からの転換についても、慣れないうちは子どもたち自身の迷いもあって大変な部分が多くありましたが、取組を進めていくうちに子どもたちが自分で計画を立てて学びのサイクルを回す様子も見られるようになり、学び方や学習意欲の変容が見られたと感じています。
成果と課題 (◎=成果、●=課題)
◎ 単元の始めにパフォーマンス課題やルーブリックなどのゴールを共有することで、子どもは学習の全体像をイメージ
しやすくなり、見通しをもって行動できるようになった。それにより内発的動機付けが促進され、学びに対する姿勢が
受動的なものから能動的なものへと変容し、学習意欲の向上につながった。
◎ ICT活用の場や課題に対する複数の選択肢を用意することで、教師に聞く前に自力で情報収集したり、友人たちと
協働して学びに向かったりするなど、多様な学習方法の自己選択・自己決定が促進され主体的に学ぶ姿につながった。
● 学習方法の自己決定は促進されたが、スライド作成が「教科書の内容を丁寧にまとめる」に留まるなど、提示された
課題が子どもの知識をフル活用し、教科書外の内容へと探究を深めるところまでは至らなかった事例もある。そのた
め、子どものもつ多様な興味・関心や初発の思考や行動を起こす力・好奇心を最大限に引き出すためには、単元課題や
提示する学習課題の「提示方法」や「幅」について、学習内容をさらに発展させられるような工夫が必要であると考え
る。
◎ 学びのサイクルを積み重ねることで、困難に直面した際に自分で考えて行動しようとする姿が見られ、主体的に学習
を調整する力が向上した。
◎ 学びのサイクルが定着したことで、子どもたち自身のメタ認知能力が強化され、「計画を立てる」「やり方を選ぶ」
「振り返る」などの活動全体を見通すことができるようになったため、次の学びに向けた学習意欲が向上した。
● 学習の進捗を確認し、必要に応じて学習方法や計画を見直したり、家庭学習を行ったりするという高度な「学びの主
体的な調整」ができるまでには至らなかった。そこで、振り返りの定着や次の目標設定のみならず、目標の修正や計画
全体の調整を主体的に行う具体的な手段や方法を身に付けていくために繰り返し学びのサイクルを回し、小学校段階か
ら主体的に学びを調整する力を養う必要があると考える。
参考・引用文献
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年6月)』
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年6月)』
- 文部科学省『中学校学習指導要領解説 社会編(平成29年7月)』
- 文部科学省『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)』令和3年1月26日中央教育審議会
- 文部科学省『20240311「授業がこんな風に変わりました。そのために、こんな授業づくりをしてきました。」(R5アドバイザー事業オンライン学習会【第8回】)(2024年3月11日)』
- 国立教育政策研究所『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(中学校編)』
- 北海道教育委員会『令和6年度全国学力・学習状況調査 北海道版結果報告書』
- 北海道教育研究所連盟『道研連の概要』
- OECD『The OECD Learning Compass 2030』
- 市川伸一、篠ヶ谷圭太『学習の自己調整は日常的学習行動の中でどう促進されるのか―研究,実践,政策の動向と今後の展望―』2023
- 石井英真、鈴木秀幸(編著)『ヤマ場をおさえる学習評価 深い学びを促す指導と評価の一体化入門』図書文化、2021年
- 奥村好美、西岡加名恵(編著)『「逆向き設計」実践ガイドブック』日本標準、2020年
- 白井俊『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来』ミネルヴァ書房、2020年
- 高橋純『個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた授業づくりと教育データの利活用』(高橋純|note)
- 奈須正裕『個別最適な学びと協働的な学び』東洋館出版社、2021年
- 西岡加名恵『教科と総合学習のカリキュラム設計』図書文化、2016年
- 西岡加名恵『資質・能力を育てるパフォーマンス評価』明治図書、2016年
- 西岡加名恵、石井英真(編著)『見方・考え方を育てるパフォーマンス評価』明治図書、2018年
- 西岡加名恵、石井英真(編著)『教科の「深い学び」を実現するパフォーマンス評価』日本標準、2019年
