十勝教育研究所 協力員研究主題
当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子どもを育む研究(1/2年次)
~キャリア発達課題を踏まえた指導計画と自己の生き方・在り方を探究する学習展開の工夫を通して~
研究の概要
研究の仮説と構造図
研究の仮説
特別活動を中心に、義務教育9年間の指導の系統性を意識した単元指導計画に基づいて子ども一人一人の基礎的・汎用的能力を高め、子どもが自らの生き方や在り方に照らして課題を発見したり、他者との対話を通して納得解を見出したりする学習活動に取り組むことによって、社会の変化と主体的に向き合う子どもを育むことができるだろう。
研究構造図]

研究構造図について
緑色のらせん…「指導計画の工夫」を示す。身に付けさせたい力と目指す子ども像を明確にし、教員と子どもが育成すべき資質・能力や態度を共有することで、個々の学習活動が絶え間なく連続し、結び付いている様子を表している。
黄色のらせん…「学習展開の工夫」を示す。集団での合意形成(納得解の創造)が、個人での意思決定(自己の在り方生き方を考え、将来を設計しようとする態度)を促進するという、相互補完的な関係を表している。
子どもが過去・現在・将来における学習活動の結び付き(学びの連続性)を意識するとともに、他者との対話を通じた自己の変容に迫る学習経験を積み重ねることで、「当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子ども」へと近付くことを目指す。
研究の詳細
主題設定の理由
キャリア教育の必要性と法的根拠から
生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新などにより、社会構造や雇用環境は大きく、かつ急速に変化しており、予測が困難な時代となっている。このような時代においても、子ども一人一人が、社会の変化に受け身で対応するのではなく、主体的に関わり合い、自らの可能性を発揮し、多様な他者と協働しながら、よりよい社会と幸福な人生を切り拓く、未来の創り手となることができるよう、「生きる力」を育むことが目指されている。
中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(平成 11 年 12 月)」において示された「キャリア教育」の概念では、「学校教育と職業生活との接続」の改善を図るため、小学校段階から発達の段階に応じて適切に指導を展開する必要があることが提言された。その後、様々なキャリア教育推進施策が展開されているが、教育基本法(平成18年改正)においては、「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培う」ことが、義務教育の目的の一部に位置付けられた。
また、学校教育法(平成19年改正)では、新たに設けられた義務教育の目標の一つとして「職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと」が定められ、小学校からの体系的なキャリア教育実践に対する法的根拠が整備された。
学習指導要領から
平成29年改訂の小学校及び中学校の学習指導要領総則では、「児童(生徒)が、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」と示されている。
子どもに学校で学ぶことと社会との接続を意識させ、一人一人の社会的・職業的自立に向けて 必要な基盤となる資質・能力を育み、キャリア発達を促すキャリア教育の充実を図ることが求められている。そして、子どもが自己の在り方・生き方を考え、主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、組織的かつ計画的な進路指導を行うことも求められている。
キャリア教育をめぐる今日的課題から
キャリア教育が教育課程全体の理念とされた一方で、これまで学校全体で行うとされてきたことが、逆に指導場面を曖昧にし、特に「進路指導」との混同を生んでいる。このため、進路内容の少ない小学校では体系的な実施が進んでいないという課題が指摘されている。また、中学校では、入学試験を控えることから、特別活動の進路指導が本来のキャリア教育をわい小化させ、職場体験などの職業理解に偏り、個人の生き方・在り方を考えさせる活動になっていないという課題もある。
そこで、キャリア形成につなげていくための中核的な時間として、特別活動を位置付けるとともに、職業観・勤労観を育む学習プログラムとして提唱された「キャリア発達にかかわる諸能力(例)」(4領域8能力)の枠組みを見直し、「分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力」として、それらの能力を「基礎的・汎用的能力」へと再構成した。

(出典:国立教育政策研究所生徒指導研究センター「キャリア教育の更なる充実のために」p.5https://warp.ndl.go.jp/web/20250801152159/www.nier.go.jp/shido/centerhp/kyouiku_career/siensiryou_all.pdf
最終閲覧:2026/04/30)
十勝の現状から
十勝教育研究所が令和8年1月から2月に掛けて、十勝管内の小・中学校及び義務教育学校にアンケート調査を行った。「基礎的・汎用的能力」の現状と、令和7年度のキャリア教育の全体計画における重点項目の相関を分析した結果、以下の傾向が確認された。まず、多くの学校が「人間関係形成・社会形成能力」及び「自己理解・自己管理能力」を重点項目に選定している。注目すべき点は、「人間関係形成・社会形成能力」が身に付いていると回答した学校の52.6%が、令和7年度のキャリア教育の全体計画でも同能力を重点化している点である。これは、不足している能力を補うという視点よりも、「既に身に付いている強みをさらに伸ばす」という教育方針を採る学校が多いことを示唆している。
一方で、「課題対応能力」を重点化する学校は相対的に少なく、現状の定着度合いにかかわらず、「人間関係形成・社会形成能力」や「自己理解・自己管理能力」が優先される傾向にあることが分かる。また、特定の能力を重点化していない学校も一定数存在しており、各校の教育方針や実態に応じた優先順位の差異が可視化される結果となった。

また、十勝管内におけるキャリア教育の共通の課題として、子どもの実態把握や検証・改善サイクルが不十分であることが、データからも明らかになった。特に小学校や義務教育学校では、「キャリア教育の全体計画の周知不足」や「教育課程への位置付けのあいまいさ」が顕著な課題となっている。さらに中学校では、小学校との連携や高等学校への接続といった「異校種間の連携」が不十分であることが課題として指摘されている。
これらの課題を克服し、キャリア教育をさらに充実させるためには、義務教育9年間を見通した系統的な教育課程を編成するとともに、組織的にPDCAサイクルを機能させる「カリキュラム・マネジメント」の視点が不可欠だろう。
【キャリア教育を推進するに当たって、どのような課題を感じているか。】
小学校及び義務教育学校から得られた回答(複数回答可)
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【キャリア教育を推進するに当たって、どのような課題を感じているか。】
中学校から得られた回答(複数回答可)
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また、「その他」の記述には次のことが挙げられた。
・ 校外での活動や学習をする際の予算を十分に確保できないこと。
・ 職業体験学習の受け入れ先との連絡や調整のための時間や回数が膨大であること。
次期学習指導要領に向けた議論の方向性から
中央教育審議会教育課程企画特別部会では、令和6年12月の文部科学大臣による諮問(「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」)を受け、教育課程の枠組みに関する事項や教科横断的な事項を中心に審議を行ってきた。同部会はこれらの審議を踏まえた論点整理のなかで、次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる基本的な考え方を下図の通りに提起している。

(出典:中央教育審議会「教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)」p.5 https://www.mext.go.jp/content/20260129-mxt_kyoiku01-000045057_01.pdf最終閲覧:2026/03/17)
キャリア教育の視点から「基盤となる考え方」を捉えると、生成AIなどデジタル技術の進展で、独自の発想や視点に価値が置かれるようになり、子どもたちが主体的に学べるよう、学びの動機付けを更新することが求められている。また、変動する労働市場や長期化する就業期間、マルチステージの人生モデルに対応できる「自らの人生を舵取りできる力」が不可欠だと示されている。さらに、人口の多様化や、SNS、生成AIがもたらす社会分断の可能性を踏まえ、デジタル時代に主体的に社会に参画する「民主的な社会の創り手」を育てることが喫緊の課題とされている。
今年度の研究の方向性
以上の状況により、当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子どもを育む上で、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を育成するために子どものキャリア発達課題を踏まえた年間指導計画及び単元指導計画を、義務教育9年間の指導の系統性に留意しながら体系的に構築することが重要だと考える。
そこで、特別活動におけるキャリア発達と自己実現に関する指導内容について、小・中学校及び義務教育学校の指導の系統性を吟味し、9年間を見通した基礎的・汎用的能力の在り方について検証する。加えて、自己の生き方や在り方を深く探究する学習場面では、自己の生き方や在り方に照らして課題を発見したり、他者と対話したりして納得解を導くまでの学習展開について研究を進めていきたい。
研究の視点
当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子ども
本研究では、目指す子ども像を、「当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子ども」とする。「当事者意識」は、「役割への主体性・責任感」と「課題への主体性」という側面から捉えることができる。「役割への主体性・責任感」とは、「よりよいコミュニティ(身近な社会である学級・学校)の形成に向け、役割を主体的に担い、責任を全うしようとする」ことであり、小学校から高等学校までの発達段階に応じて、子ども自身にとっての好き(興味・関心)や得意から、現実社会との調整へとその責任範囲が拡大していくものである。また、「課題への主体性」とは、「自己の生活や自己の属するコミュニティ(身近な社会である学級・学校)の課題に目を向け、よりよくするために主体的に関わろうとする」ことであり、自己の生活や身近な社会、人間関係についての課題を見出し、根拠をもって意見や立場を形成し、表現することができるようになることである。
これらの側面を踏まえた上で、本研究における「当事者意識をもち」とは、「自己の生活や身近な社会の課題解決に主体的に関わり、自らの問題として捉え、役割や責任を担おうとする姿」のことである。
「社会の変化と主体的に向き合う」とは、2019年にOECDが発表した「ラーニングコンパス(学びの羅針盤)」の中心的な概念である「エージェンシー」と重なる。予測困難な時代を切り拓くには、目標設定や計画立案、自己の能力・機会のモニタリング、そして逆境を乗り越える力といった多様な能力が不可欠である。これらを統合し、「変革を起こすために目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」として定義されているのが「エージェンシー」である。
また、学習指導要領総則編では、「子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすること」が求められている。さらに、「一人一人の児童(/生徒)が自分のよさや可能性を認識できる自己肯定感を育むなど、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」とも記されている。
これらのことから、「社会の変化と主体的に向き合う」とは、「多様な他者と関わり、互いのよさを生かしながら意思決定しようとする姿」だと表すことができる。
そこで、本研究では、「当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子ども」を次のように考える。
本研究における「当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子どもの姿」
○ 自己の生活や身近な社会の課題解決に主体的に関わり、自らの問題として捉え、役割や責任を担おうとする姿
○ 多様な他者と関わり、互いのよさを生かしながら意思決定しようとする姿
基礎的・汎用的能力
学習指導要領総則の「児童(生徒)の発達を支える指導の充実」では、子ども自身が生き方を考え主体的に進路を選択できるよう、学校の教育活動全体を通じて、組織的かつ計画的な進路指導を行うことが求められている。特別活動はキャリア教育の中核であり、教育活動全体の中で「基礎的・汎用的能力」を育むためには、各教科等と横断的に展開することが重要とされている。
特別活動は「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する」ことを通して、人間関係形成、社会参画、自己実現に関する資質・能力を育成する活動と定められている。その要となるのが、小・中学校の学級活動と高等学校のホームルーム活動に共通して明示された「⑶一人一人のキャリア形成と自己実現」である。小・中、高等学校が連携してキャリア形成を支援する体制が明確に示されている。
キャリア発達課題を踏まえた指導計画を作成する際には、子ども一人一人が多様な側面をもちながら段階を追って発達していくことを深く認識することが不可欠な視点である。そのため、それぞれの発達の段階に応じ、自分自身と働くことを適切に関係付け、それぞれの発達の段階における発達課題を解決できるよう取組を展開することに留意したい。
また、「中学校・高等学校キャリア教育の手引き」で例示されているように、子どもが学年末や卒業時までに「〇〇できるようになる」などの具体的な目標を設定し、取組の目標や方法、育てたい力などを教師間や校務分掌間で共通理解を図ることを重視した取組が重要である。そうすることで、学校内で共通理解を図ることができると同時に、学校外に対し、学校がどのような力を生徒に身に付けさせようとしているかを示すこともできる。
下図のように、小・中で卒業時に身に付けさせたい力をそれぞれ明示するとともに、その力を身に付けるための目標を学年ごとに具体的な姿として示すことで、小・中9年間を見通して「身に付けさせたい力」を設定している。
このように、義務教育9年間を見通した指導計画を作成し、実施、評価する際には、小・中学校の指導の系統性や小学校から高等学校までのカリキュラムのつながりを考慮した上で、実践上の課題解決や改善等を図る機会を設定することが重要であると考える。

(出典:文部科学省「中学校・高等学校キャリア教育の手引き」第3章 中学校におけるキャリア教育 p.68
https://www.mext.go.jp/content/20230606-mxt_jidou01-000030273_00001.pdf 最終閲覧:2026/03/17)
特別活動における「集団や社会の形成者としての見方・考え方」
学習指導要領解説特別活動編では、「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせるとは、「各教科等の見方・考え方を総合的に働かせながら、自己及び集団や社会の問題を捉え、よりよい人間関係の形成、よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に向けた実践に結び付けること」とされている。
本研究では、「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を具体的に「集団での関わりを通して、自己の理解を深め、自己のよさや可能性を生かす力を養うとともに、自己の在り方生き方を考え設計しようとする見方・考え方」であると捉える。
そこで右図のように、各教科等で身に付けた資質・能力について、特別活動の実践的、体験的な活動を通して社会生活に生きて働く汎用的な力として育成するという特質に留意して学習展開を構成し、研究仮説の有用性を検証する。

(出典:国立教育政策研究所「特別活動資料みんなで、よりよい学級・学校生活を創る特別活動小学校編」p.28 https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/tokkatsu_20240722-01.pdf 最終閲覧:2026/03/17)
研究の内容
本研究では、当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子どもを育むための具体的な内容として、キャリア発達課題を踏まえた指導計画の工夫(研究内容1)と、自己の生き方・在り方を探究する学習展開の工夫(研究内容2)の2つを行うこととした。
キャリア発達課題を踏まえた指導計画の工夫
⑴ 子どもに身に付けさせたい力と目指す子ども像の設定
子どもに身に付けさせたい力や目指す子ども像を設定するに当たっては、「基礎的・汎用的能力」として示されている4つの能力を基盤とすることが重要である。その上で、学校や子どもの実態を多角的に把握し、各学校において育成したい能力・態度を具体化・重点化・付加して設定する必要がある。
こうした学校教育目標や年度の重点目標、及び各種アンケート調査の結果を踏まえて、各教科の年間指導計画や単元指導計画へと落とし込んでいくことで、初めて子ども一人一人の基礎的・汎用的能力を育むことにつながるだろう。
特に、キャリア教育の指導計画を作成する際には、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力として示されている「基礎的・汎用的能力」を核としつつ、子どもの実態や学校の特色、地域の実態を把握するとともに、計画に反映させることが求められている。

(出典:文部科学省「小学校キャリア教育の手引き」第2章第2節 p.43 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/05/17/1320712_12.pdf
最終閲覧:2026/03/17)
具体的に、各教科の年間指導計画を立案するに当たっては、下図のように、キャリア発達課題を踏まえた学習活動に焦点を当てることが有効である。学習活動とキャリア教育との関連性を明示することにより、子どもに身に付けさせたい力が明確になる。

(出典:文部科学省「小学校キャリア教育の手引き」第2章第3節 特別活動の年間指導計画〈4年具体例〉p.54 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/05/17/1320712_13.pdf
最終閲覧:2026/03/17)
したがって、以下の点に留意しながら、実際の単元指導計画を作成することとする。
⑵ 基礎的・汎用的能力の具体的な内容の共有
キャリア発達課題を踏まえた単元指導計画を作成する上で、系統的・体系的な指導の視点は欠かすことができない。子ども一人一人の基礎的・汎用的能力を育むためには、子どもに身に付けさせたい力や目指す子ども像を教員が把握しているだけでなく、それらを子どもたちと共有し、共通理解を図って学習を進めていくことが重要であると考える。
板橋区立中台小学校(東京都)のキャリア教育実践では、基礎的・汎用的能力を踏まえつつ、あらゆる教育活動を教科等横断的につなぎ、子どもに身に付けさせたい力を育てようと取り組んできている。この教育実践では、全教科で育成を目指す基礎的・汎用的能力の具体的な内容を、「なかだい4タイムス」として子どもと教員が共有する教育活動が展開されていた。

【基礎的・汎用的能力を育むための「なかだい4タイムス」(東京都板橋区立中台小学校)】
(出典:日本キャリア教育学会編『新版 キャリア教育概説』Ⅳ-第2節 p.76)
そこで本研究では、東京都板橋区の事例を基に、単元の学習活動全体を通して教員と子どもが育成すべき資質・能力や態度を共有しながら学習を進めることで、現在取り組んでいる学習活動が、これまでの学習活動やこれからの学習活動に結び付いているという意識を醸成することにつながると考えた。
具体的には、教員が単元の導入時に、次の4点を子どもに提示・共有することとする。
このように、過去・現在・将来における学習活動の結び付き(学びの連続性)を意識することを通して、子どもは「当事者意識」をもち、「社会の変化と向き合う」ことにつながるだろう。
自己の生き方・在り方を探究する学習展開の工夫
⑴ 納得解を基に意思決定する機会の設定
学習指導要領解説特別活動編によれば、特別活動における「見方・考え方」を働かせた学習活動において、「集団の中での自己の役割」や「他者との関わり」を自覚する過程が重視されている。
具体的には、集団での活動を通して自己理解を深めることが、「自己のよさや可能性を生かす力」の育成につながり、ひいては「自己の在り方生き方を考え、将来を設計しようとする態度」の形成に結び付くと示されている。
したがって、こうした資質・能力を育むための学習活動は、「集団での合意形成」と「個人での意思決定」という2つの側面から考えることができる。そこで、本研究における「合意形成」と「意思決定」の定義と関連性について、次のように整理する。
○合意形成とは、多様な意見・価値観を認め合い、対立や葛藤と向き合いながら、納得解を創造していくこと。
○意思決定とは、多様な情報や他者との関わりを踏まえ、自己の価値観に照らし、責任をもって行動を選択していくこと。
ここでの「合意形成」と「意思決定」は、それぞれが分離、独立したものではなく、合意形成に自己の価値観が持ち込まれ、その過程で意思決定に関わる自己理解や価値観が更新されるという往還関係にあると言えるだろう。
以上のことから、本研究が提示する「自己の生き方・在り方を探究する学習展開」では、集団(学級内やグループ内)での合意形成によって創造された納得解が、その後の個人での意思決定に大きな影響を与えうるという立場をとる。具体的には、「集団での合意形成」から「個人での意思決定」へと至る学習プロセスを構造化することで、「自己の在り方生き方を考え設計しようとする意識」を醸成することができると考えた。

(この図は、文部科学省中央教育審議会初等中等教育部分科会「特別活動ワーキンググループ【資料1】「特別活動における合意形成・意思決定、学級活動、児童会・生徒会活動及び高次の資質・能力について(2026.02.16)」を基に作成したhttps://www.mext.go.jp/content/20260216-mxt_kyoiku01-000047382_3.pdf 最終閲覧:2026/03/17)
⑵ 子どもが学びを見通して、振り返る機会の設定
子ども一人一人の「基礎的・汎用的能力」を育むためには、身に付けさせたい力や目指す子ども像を子どもと教員が共有し、学習する目的の共通理解を図った上で展開していくことが不可欠である。こうした学習活動の本質は、子どもによる参加の積極性や理解度といった単なる学習の成立にあるのではなく、学習経験の積み重ねによる「他者との対話を通じた自己の変容」に迫ることである。したがって、学習単元間の接続や各教科等との連携に留意した学習過程を構築することが求められるだろう。
そのため、「合意形成」及び「意思決定」のプロセスにおける実践・振り返り場面では、集団の合意に基づいた実践や個人の意思決定に基づいた実践を通じ、他者との対話による自己の変容を内省したり、新たな自己課題を発見して次なる学びを見通したりする学習過程を重視する。
そこで本研究では、学習の事前・中間・事後アンケートを通じて、価値観の変容や「やればできる」という自己効力感を定量的に把握するとともに、他者の視点を取り入れたことによる「言葉の変容」を抽出することとした。
下図のモデルに従い、子どもが自らの学びを見通し、振り返る機会を適切に設定することで、探究的な学習展開を一体的に実現していく。

【自己変容を促す「見通し」と「振り返り」の連動モデル】
このように、集団での合意形成によって得られた「納得解」を基盤とし、個人で意思決定する機会を設定することで、自己の価値観が他者の価値観と衝突したり、融合したりすることで、意思決定に関わる自己理解が更新されることになるだろう。こうした学習経験の積み重ねこそが、「当事者意識をもち、社会の変化と主体的に向き合う子ども」の育成、すなわちキャリア発達の核になると考える。
研究・検証
| 研究協力校 | ○○ ○○(○○町立○○小学校) ○○ ○○(○○町立○○中学校) | |
|---|---|---|
| 担当所員 | 千葉 直哉 宮崎 広樹 | |
授業実践
授業実践は随時掲載予定です。
単元計画
引用・参考文献
○ 日本キャリア教育学会編『新版 キャリア教育概説』,東洋館出版社,2020(令和2)年
○ 藤田晃之編著『MINERVAはじめて学ぶ教職⑲ キャリア教育』,ミネルヴァ書房,2018(平成30)年
○ 教育基本法(平成18年改正)
○ 学校教育法(平成19年改正)
○ 小学校学習指導要領(平成29年3月)
○ 小学校学習指導要領解説 総則編(平成29年6月)
○ 中学校学習指導要領(平成29年3月)
○ 中学校学習指導要領解説 総則編(平成29年6月)
○ 高等学校学習指導要領(平成30年3月)
○ 高等学校学習指導要領解説 総則編(平成30年3月)
○ 文部科学省「小学校キャリア教育の手引き」(令和4年3月)
(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/mext_01951.html)
○ 文部科学省「中学校・高等学校キャリア教育の手引き」(令和5年3月)
(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/mext_00010.html)
○ 文部科学省「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」(令和6年12月)
(https://www.mext.go.jp/content/20241226-mxt_kyoiku01-000039494_1.pdf)
○ 文部科学省中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」(平成11年12月)
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/991201.htm)
○ 文部科学省中央教育審議会教育課程企画特別部会 論点整理(令和7年9月)
(https://www.mext.go.jp/content/20260129-mxt_kyoiku01-000045057_01.pdf)
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/991201.htm)
○ 文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会特別活動ワーキンググループ「【資料1】特別活動における合意形成・
意思決定、学級活動、児童会・生徒会活動及び高次の資質・能力について(2026.02.16)」(令和8年2月)
(https://www.mext.go.jp/content/20260216-mxt_kyoiku01-000047382_3.pdf)
○ 国立教育政策研究所「特別活動指導資料 特別活動小学校編」(平成30年12月)
(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/tokkatsu_20240722-01.pdf)
○ 東京都教育委員会「キャリア・パスポートを活用したキャリア教育の充実に向けて」(令和2年4月)
(https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kyoiku/careerleaflet)