共同研究

研究主題

自分の考えを表現し合い、学びを深める子どもを育む研究

~考えを広げ深める対話の工夫と、学びをつなげる振り返りを通して~

主題設定の理由

今日的な課題 学習指導要領の趣旨から

 近年、Society5.0時代の到来やグローバル化の進展等により、社会構造が急速に変化し、予測が困難な時代になっている。その中で、学校教育には、子どもたちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していく学びの構築が求められている。そのためには、子どもたちがこれからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けることができるよう、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を目指していかなければならない。

 このような状況から、子ども自身が見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげることが重要になる。各教科の指導に当たり、学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるよう工夫することで、「主体的な学び」の実現につなげることが必要である。

 さらに、子ども自身が子ども同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかが重要な視点の1つであるとされている。現在、1人1台端末の導入により、一人一人の考えをお互いにリアルタイムで共有できるようになり、対話的な学びも様々な工夫が可能となっている。

北海道・十勝の現状から

 令和5年度全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査によると、「学級の友達(生徒)と話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができた」「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいた」と思う子どもは、北海道・十勝管内のいずれにおいても20%~30%台にとどまり、決して高い数値ではなかった。これらの結果から、考えを広げ深めるための対話の工夫と、主体的に学ぶ力の育成が共通の課題となっていることが明らかになった。   

 加えて、十勝管内の小・中学校においては、令和5年度の校内研究主題を、「自分の考えを表現する」「伝え合う」と設定した学校が約34%、「自ら学ぶ」「主体的に学ぶ」「子どもを主語にする」とした学校が約50%に上り、自分の考えを表現し合い、主体的に学びを深める子どもを育むことの必要性を、多くの学校が感じている現状が伺えた。

研究1年次の取組の成果と課題

 研究1年次では、考えを広げ深める対話の工夫と、学びを自覚する振り返りの充実を通して、自分の考えを表現し合い、学びを深める子どもを育むことができるだろうと考え、対話と振り返りに焦点を当てて研究を推進した。

 小・中学校2つのグループに分かれて、それぞれ2回の授業実践を行った。その検証から、教師が対話の視点を提示し、思考の過程を可視化しながら他者と自分の考えを比較することで、考えを広げたり深めたりすることができた。また、振り返りの視点を示し、ICTを活用して他者と共有することによって、お互いの振り返りのよさを意味付けたり価値付けたりしながら、自分自身の学びの過程や変容を自覚することができた。

  その一方で、子どもが必要感をもち、主体的に対話に取り組むためには、対話の相手やタイミング、形態などを、教師主導ではなく子ども自身が選択・決定できるようにする必要があるのではないかという課題が挙げられた。また、学習のねらいを明確にし、単元のゴールを子どもと教師が共有することや、学習を通して生まれた新たな気付きや課題を次の学びにつなげるという点に課題が残った。

今年度の研究の方向性

 北海道・十勝の現状と、研究1年次の成果と課題から、子ども同士、子どもと教師が課題や目的意識 を共有し、自己決定をしながら主体的に取り組む対話が必要だと考える。また、視点を明確にした振り返りを積み重ね、学習を通して生まれた新たな気付きや課題を共有・比較することで、学びを次につなげていくことができるだろう。これらの対話の工夫と振り返りを通して、自分の考えを表現し合い、学びを深める子どもを育むことができるだろうと考え、主題を設定した。

研究の仮説と内容、構造図

研究主題
自分の考えを表現し合い、学びを深める子どもを育む研究
~考えを広げ深める対話の工夫と、学びをつなげる振り返りを通して~

研究の仮説

 協働的な学びにおいて、子どもが課題・目的意識をもち主体的に対話に取り組み、単元を通して振り返りを積み重ね、学びを共有・比較して次につなげることによって、自分の考えを表現し合い、学びを深める子どもを育むことができるだろう。

研究計画

⑴ 第1年次(令和5年度)

 ① 研究主題、仮説、内容の検討

 ② 理論研究

 ③ 共同研究員による実践検証(小学校第5学年国語科、中学校第1学年外国語科)

 ④ 研究の中間まとめと研究紀要の刊行

⑵ 第2年次(令和6年度)

 ① 研究仮説、内容、計画の修正

 ② 理論研究

 ③ 共同研究員による実践検証

 ④ 研究のまとめと研究紀要の刊行

検証計画

 検証内容

 ① 考えを広げ深める対話の工夫

   子ども同士、子どもと教師が課題・目的意識を共有し、自己決定をしながら主体的に対話を行うことで、自分の考

  えを表現し合い、学びを深める子どもの姿につながっていたか。

 ② 学びをつなげる振り返り

   視点を明確にした振り返りを積み重ね、学習を通して生まれた新たな気付きや課題を共有・比較することで、自分

  の考えを表現し合い、学びを深める子どもの姿につながっていたか。

⑵ 検証方法

 ① 考えを広げ深める対話の工夫に関わって

  ・共同研究員による子どもの見取り(発言、つぶやき、行動等)

  ・ICT、ワークシート、ノート等可視化された対話記録の分析

  ・事前、事後のアンケート調査

 ② 学びをつなげる振り返りに関わって

  ・ICT、ワークシート、ノート等による子どもの振り返りの分析

  ・事前、事後のアンケート調査

研究の推進

○ 本研究は、十勝教育研究所と管内各研究所が一体となり推進するものである。

○ 管内の子どもたちの実態を踏まえた研究仮説を基に、理論研究や実践検証を進める。

○ 共同研究員を2つのグループに分け、推進幹事、副幹事を選出して、協議を重ねながら実践検証をする。

○ 幹事は、グループ研究の中心となり実践検証を推進し、副幹事はそれをサポートする。

○ 十勝教育研究所は共同研究員と協議し研究を総括する。また、研究推進に関わる文献、資料等を提供する。

○ 共同研究員による研究実践の成果を広く管内に提供する。

研究の組織

グループAグループBグループ
学年・教科小学校第2学年・国語科中学校第3学年・数学科 
推進幹事中村 俊太(芽室南小学校)藤原 悠大(大空学園義務教育学校
推進副幹事程野 純貴(  足寄小学校  )上野 純子(  音更中学校  ) 
授業者齊藤 織斗(  大樹小学校  )長澤 翔太(  幕別中学校  )
共同研究員土屋 英之(上居辺小学校)
杉浦 亜弓(上士幌小学校)
中山 竜太(  鹿追小学校  )
土橋 真理(中札内小学校)
原田 憲未(上更別小学校)
名越 正道(  池田小学校  )
幾島 佑真(本別中央小学校
柴山 貴大(  新得中学校  )
髙原 悠輔(  御影中学校  )
山下 喜久(  広尾中学校  )
添田佑生子(  豊頃中学校  )
田口 宏子( 上浦幌中学校
髙松ななみ( 陸別小学校 ) 
         
担当所員柴田 悠二   山本 由佳   佐藤 悠樹

研究推進計画(令和6年度 2/2年次)

      研 究 の 推 進 内 容         諸 会 議
・研究主題、研究計画の作成・十勝教育研究所業務計画会議
・研究の視点、研究推進の方向性の確認・十勝管内教育研究所連絡協議会総会
・共同研究員の委嘱
・研究概要の説明
・グループ分け、幹事・副幹事・授業者の決定
・実践研究の内容、方針等の検討
・第1回共同研究員会議(6/4)
(全体・グループ会議)
・第2回共同研究員会議(6/20)【Zoom】
(推進幹事・副幹事・授業者会議)










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・理論研究

・理論研究・研究の経過報告(広報誌)
・研究紀要原稿の検討・集約
・第3回共同研究員会議(7/9)
(全体・グループ会議)
・第4回共同研究員会議(8/22)
(グループ会議)
 
・第5回共同研究員会議(9月中)
(授業実践1・グループ会議)
・第6回共同研究員会議(9月中)
(授業実践2・グループ会議)
 
・第7回共同研究員会議(10/3)【Zoom】
(グループ会議)
12・研究紀要の作成
・研究発表大会パワーポイント作成
・研究紀要の作成
・研究発表大会に向けての最終打合せ
・研究発表大会リハーサル
・第8回共同研究員会議(1/16)
               【Zoom】
(推進幹事・副幹事・授業者会議)
・第9回共同研究員会議(1/28)
(授業者・推進幹事・副幹事会議)
・研究発表大会(2/6)
・研究紀要の完成、刊行

研究の視点と内容

研究の視点

自分の考えを表現し合い、学びを深める子ども

 学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うことが示されている。見通しをもって粘り強く取り組み、自己の活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」の視点、子ども同士の協働等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」の視点、各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、情報を精査して考えを形成すること等に向かう「深い学び」の視点を手掛かりに、各教科等で身に付けるべき資質・能力を育成することが求められている。   

 また、社会で活用できる資質・能力を育成していくためには、知識の記憶だけにとどまらず、「理解していることやできることをどう使うか」という思考力、判断力、表現力等を育成することが求められている。思考力、判断力、表現力等とは、知識及び技能を活用して課題を解決するために必要な力とされており、その過程には、大きく次の3つがあると考えられている。

・物事の中から問題を見いだし、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、振り返って次の問題発見・解決につなげていく過程
・精査した情報を基に自分の考えを形成し文章や発話によって表現したり、目的や場面、状況等に応じて互いの考えを適切に伝え合い、多様な考えを理解したり、集団としての考えを形成したりしていく過程
・思いや考えを基に構想し、意味や価値を創造していく過程

小学校及び中学校学習指導要領解説 総則編(平成29年7月)より抜粋

 さらに、子ども一人一人がよりよい社会や幸福な人生を切りひらいていくためには、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する「メタ認知」に関わる力の育成が必要となる。教師による評価とともに、自己評価や子ども同士の相互評価を行うことで、子ども自身が自分の変容を自覚することができ、次の学習への意欲にもつながると考える。

  そこで、本研究では、北海道・十勝の子どもの現状を踏まえ、これからの時代に求められる資質・能力を身に付けることができるようにするため、目指す子どもの姿を「自分の考えを表現し合い、学びを深める子ども」とし、以下のように定義することとした。

自分の考えを表現し合い、学びを深める子どもの姿
○ 考えの根拠をもち、多様な表現で伝えようとする姿
○ 他者や自己との対話を通じ、考えを広げようとする姿
○ 対話を通して得られた様々な情報を精査して、自分の考えを再形成しようとする姿
○ 自分の学習活動を振り返り、学んだことを次につなげようとする姿

考えを広げ深める対話

 学習指導要領で示されている「対話的な学び」とは、他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める学びである。身に付けた知識や技能を定着させ、多様な表現を通じて、子ども同士や教職員などと対話することによって思考を広げ深めることができると考えられている。

 そこで、自分の考えを広げたり深めたりするためには、協働的な学習における対話を充実させることが重要と考える。協働的な学習とは、異なる個性をもつ者同士で問題解決に向かう学習と言われている。協働的に学ぶことには、「多様な情報の収集に触れること」「異なる視点から検討ができること」「地域の人と交流したり友達と一緒に学習したりすることが、相手意識を生み出したり、学習活動のパートナーとしての仲間意識を生み出したりすること」という3つの意義があるとされている。協働的な学習における対話を通して、見方・考え方を広げたり深めたりすることが可能となるだろう。

 加えて、協働的な学習は、グループとして結果を出すことが目的ではなく、その過程を通じて、一人一人がどのような資質・能力を身に付けるかということが重要だと言われている。グループとして考えるだけではなく、一人一人が学習の見通しをもったり、振り返ったりすることが求められる。

  協働的な学びを進めるためには、自分の意見や感想をもつ必要があると考える。まずは1人でじっくりと自己との対話を行い、考えをまとめた上で他者との対話をすることが必要であろう。そして、他者との対話により学びを広げたり深めたりし、再び自己との対話をすることで自分自身の考えを再形成していく。つまり、他者との対話と自己との対話の往還により、学びを深めることができると考える。

本研究における「対話」
〇 他者との協働的な学習により考えを広げ深めることを目的とした「他者との対話」
○ 自分自身の感じ方や考え方を深めることを目的とした「自己との対話」

学びをつなげる振り返り

 子どもが主体的に学ぶ態度を育み、学習意欲を向上させるために、学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるように工夫することが重要と考える。

 振り返りは、自らの学びを意味付けたり、価値付けたりして自覚し、他者と共有していくことで、次の学びに主体的に取り組む態度を育むことにつながると言われている。特に、文字言語によってまとめることは、学習活動を振り返り、既有の知識と収集した情報を関連させ、自分の考えとして整理する深い理解につながっていくとされている。また、子どもが自らの学習の状況を振り返る機会を設けることで、粘り強い取組を行おうとする側面と、自らの学習を調整しようとする側面を見取る機会が増え、より正確な「主体的に学習に取り組む態度」の評価につなげることが可能となる。さらに、授業のねらいと子どもの学びが正対しているか、子どもがどこに疑問やつまずきを感じているか等を把握することで、次時以降の教師の授業改善につなげることができると考える。

 既に多くの実践が行われている「学習内容を確認する振り返り」に加えて、今後は以下のような視点での振り返りを行うことが必要であろう。これらを積み重ねることによって、子ども・教師が振り返りを通して学びをつなげていくことができるようになると考える。

本研究における「振り返り」
○ 自己の学びと他者の学びをつなげる振り返り
 ・1単位時間の授業や単元全体を通して、自分の学びを意味付けたり価値付けたりして自覚し、他者と共有していくもの。
 ・他者と共有したり教師が適切に評価をしたりすることにより、多様な考え方に触れ、自分の学びを深めるもの。
○ 今までの学びとこれからの学びをつなげる振り返り
 ・過去や現在の学習内容や他教科等の学習内容と関連付けたり、一般化したりするもの。
 ・学習内容を自らとつなげ、自己変容を自覚するもの。
 ・学習によって生まれた気付きや疑問などから新たな課題を生み出し、次の学びにつなげるもの。

研究の内容

考えを広げ深める対話の工夫

⑴ 課題や目的意識の共有

 考えを広げ深める対話にするためには、子どもが必要感をもち、主体的に取り組むことができる課題を設定することが必要となる。現実的で必然性があり、かつ子どもたちが対話・協働することでよりよい解決に結び付くものを設定することが望ましい。そのような課題を単元の中に位置付け、子どもと教師、子ども同士が課題や目的意識を共有することで、対話への必要間が生まれると考える。

 教師は、子どもが対話の目的を理解して協力し、課題解決に向かうことを支援するファシリテーターとしての役割を果たすことが重要となる。教師による知識や情報の提供は必要だが、説明や介入をしすぎることは子どもの成長・発達の機会を奪う可能性がある。教師は子どもの自主性や自発性を励ましたり、参考となりそうな意見や対話の様子を取り上げて全体に共有したりする等の支援を行い、学びを促進していくことが望ましい。

 また、課題や目的意識を共有してよりよい対話を行うためには、学級の普段からの人間関係づくりや支持的な雰囲気づくりも重要となる。対話とは「聴き合い」でもあることから、同意・質問・考えの再形成といった聴く力も、学校生活全体を通して育成していく必要があるだろう。

 さらに、対話場面を設定しても、一方的なやり取りになったり、互いの考えを伝えるだけになったりすることがある。対話の質を向上させ、子どもの考えを広げ深めるためには、視点を明確にすることが必要だと考える。そこで、下記のような思考スキルを対話場面で活用することにより、単なる考えの交流から課題解決に向けてねらいを明確にした対話となり、資質・能力の育成につながるだろう。

多面的に見る
多角的に見る
分類する見通す要約する構造化する
順序立てる関連付ける応用する変化を捉える推論する
焦点化する変換する広げてみる抽象化する 
比較する理由付ける評価する具体化する 
泰山裕氏(鳴門教育大学大学院准教授)作成の表を基に学習指導要領(平成29年3月)より作成

⑵ 自己決定の場の設定

 令和4年12月改訂の生徒指導提要では、教科の指導と生徒指導を一体化させた授業づくりの視点の1つとして、「自己決定の場を提供する」ことが示されている。子どもがどのような目標をもち、どのような気持ちで課題に臨み、どのような役割を果たすのかを自覚することも重要であるとされている。そのため教師は、子どもがまず一人で十分に思考したり調べたりする時間を確保することが必要となるだろう。対話に関しても、その形態は多様であり、対象(教材や事象)との対話、自己内対話、ペアでの対話、座席が近くの人との対話、グループでの対話、聴きたい人との対話、全体での対話などが考えられる。授業の流れの中で、子どもが対話の形態や、自己との対話の時間と他者との対話の時間のタイミングなどを自己決定したり、学びの進行に応じて柔軟で臨機応変に対応することが望ましいだろう。

 さらに、対話の質をより高めるためには、子どもの習熟の状況等を踏まえながら、教師が声掛けをしたり、対話の過程を可視化したりするような活動を取り入れることが有効だと考える。対話における思考の過程を可視化することで、抽象的な情報を扱うことが苦手な子どもが、対話の内容を整理することができたり、複数の子どもが協働で情報の整理や分析を行ったりしやすくなるとされている。

 また、対話における思考の過程の可視化は、言語活動の様々な工夫と合わせて活用することで効果が発揮されると言われている。学習のねらいを達成するために、思考ツール、ワークシート、ノート、ICT等、発達段階や実態に応じて子どもが適切に自己決定していくことが必要であろう。

学びをつなげる振り返り

⑴ 視点を明確にした振り返り

 学びを深めるための振り返りにするためには、学習内容を価値付けたり次の学びにつなげたりする振り返りを継続的に行う必要がある。そのためには、振り返りの視点を子どもたちに示すことが有効と考える。教師が指導のねらいや目的に応じた視点を示したり、複数の視点から学習内容に応じて子どもが選択できるようにしたりすることで、学習内容の意味や価値を深く考えたり、新たな疑問や課題を見付けたりしていくような振り返りになるであろう。

ポイント振り返りの視点
⑴ 「振り返りの目的を確認
 する。
① 分かったことやできるようになったこと(学びの自覚)
② 今後の学習で取り組みたいこと(学びの見通し)
③ 疑問に思ったこと、もっとやってみたいこと(新たな学びの創造)
⑵ 他者と「振り返り」を共有 
 する。
④ 友達の振り返りを読んで気付いたことや考えたことを生かす
                 (他者の振り返りを自分の学びに生かす)
⑶ 「振り返り」を振り返る。⑤ これまでの振り返りから自分の変化や成長を自覚する(自己の成長の自覚)  
⑥ これまでの振り返りから自分の考えを捉え直す(批判的検討)
大分県教育センター「振り返り」の充実に向けて(令和3年6月)を基に作成

⑵ 共有・比較する振り返り

 子どもが学びを深めるためには、振り返りを他者と共有したり、これまでの自分の振り返りに着目したりすることが有効だと考える。1人1台端末の活用によって振り返りの積み重ねと共有が容易になり、子どもは自分及び他者の学びや変容を、日常的に見返したり比較したりすることができるようになった。互いの振り返りを見合うことや、教師が意図的に取り上げて共有することを通して、子どもは「そういう見方や考え方もあったのか」「過去の学びと比べてこう変わったな」「あのとき学んだこととつながった」「これを次の学習で使ってみよう、試してみよう」といった学びのヒントや新たな視点を得ることができると考える。

 なお、振り返りは書いて終わりとするのではなく、教師が価値付けたり意味付けたりすることが必要だと考える。振り返りの視点を基に形成的評価を行うことで、子どもは学びを自己調整し、次の学びへつなげることができるであろう。

 このように振り返りを共有・比較することで生まれる気付きや課題が、自己と他者の学び、今までとこれからの学びをつなげ、子どもの学びを深めていくと考える。