2人の子どもが私に教えてくれたこと
上士幌町立上士幌中学校 教諭 俵口 修治
はじめに
特別支援教育に17年間携わる中で、2人の最重度知的障害の子どもと出会う機会がありました。1人は自閉症の子ども。もう1人はダウン症の子どもです。今回はこの2人の子どもが私に教えてくれたことをご紹介したいと思います。
子どもに流れる時間を軸に「授業」を考える
1つ目は、自閉症の子どもとの畑作業での話。
「1時間でここまでやる」と決めていた私は、作業をしないで畑の土を風に飛ばして遊ぶ子どもを叱ったのですが、叱られた子どもは自分のシャツの襟首を噛み、畑の中で泣いてしまいました。本当は風が気持ちよくて、畑にいることを自分なりに楽しんでいただけなのに。教師が自分の価値観を子どもに押し付けても、子どもを泣かせることしかできませんでした。人には一人一人固有の時間が流れています。その時間を軸にしてこそ初めて私たちは子どもに授業ができる。そんなことをこの子どもは私に教えてくれました。
教師の限界を子どもの限界にしない・子どもの限界を教師の限界にしない
2つ目は、ダウン症の子どもとの発音トレーニングでの話。
ダウン症の子どもは筋肉の弱さから発音が不正確になりがちですが、この子どももそうでした。例えば「ロボットや」が「ロボトーや」に。「違うよ」と言われているのは分かるのですが、真似もできない。2人でどうしたらよいか分からないまま時間だけが過ぎていきました。しかし、そんなある日、本当に突然「ロボットや」の発音ができるようになりました。体づくりで腹筋をしてお腹に力を入れて息を止めたとき、「っ」の音が出ました。
その子どもは驚いた顔をして、私に「ロボット?」と聞いてきました。筋肉の使い方が同じだということに自分で気が付いたようです。この子どもは、腹筋ができるようになるのも3年掛かりましたが、諦めずにいろいろなことを頑張って本当によかったと思いました。
おわりに
共に学び、共に育つ。今後も一人一人の子どもとの出会いを大切にしながら、頑張っていきたいと思います。
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