研究所めぐり(351号)

   

「主体的な学び」の確立を目指して         ~陸別町教育研究所の取組~

陸別町教育研究所 所長 小田 浩平

はじめに

 陸別町教育研究所は、陸別町の今日的な教育課題の解決と授業改善に資するため、資料の収集・分析・提供を進めています。

 本稿では、その取組の一端をご紹介いたします。

主な取組について

1 小中一貫教育推進委員会研修部との連携

 陸別町では、町教育行政執行方針における「陸別の子は陸別で育てる」を基本理念に、小中一貫教育に取り組んでいます。当研究所は、その核となる教員研修の充実に貢献するべく、以下の2点を特長とする研修を推進しています。

 ① 全ての校内研修を小中一貫教育推進委員会研修部(以下「小中一貫研修部」)が計画・運営し、

  常に小中合同で実施する。

 ② 子どもたちに「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実による「主体的・対話的で

  深い学び」を保障するため、教員自身の研修も「個別最適な研修」と「協働的な研修」の一体的な

  充実を目指す。

 これは、一人一人の教員が自ら研修課題を設定し、類似する課題をもつ教員同士が校種の垣根を越えて連携するとともに、グループワークを通じて学習指導や生徒指導のスキルを磨くことで授業者としての総合的な指導力を高めることを目的としています。このような研修形態は、教員研修が子どもの学びのロールモデルとなることを意図しています。陸別町は初任段階教員や経験年数10年未満の中堅段階教員が多く、こうした研修は教員としての実践的指導力を高める上で、最適な取組であると考えています。
 当研究所は、所員全員が小中一貫研修部に所属し、研修推進の一翼を担っています。また、教育をめぐる動向やICTの効果的な活用、授業づくりに関する提案や情報提供を適宜行い、教員の実践的指導力向上に寄与できるよう取り組んでいます。

2 陸別の子どもの学力・体力の把握と分析

 当研究所では毎年、「全国学力・学習状況調査」及び「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果を詳細に分析し、陸別の子どもの「強み」「成果」「課題」を明確にしています。この分析結果は小中一貫研修部に提供するだけでなく、学校だよりや町の広報誌を通じて保護者や地域住民とも共有しています。

 例えば、令和6年度全国学力・学習状況調査からは、以下の「強み」「成果」が見いだされました。

 ・小中ともに「学習の中でICT機器を活用することが多い」と

  回答した子どもの割合は全国、全道を大きく上回っている。

 ・小中ともに「あなたの学級は、学級生活をより良くするために

  学級活動で話し合い、互いの意見の良さを生かして解決方法を

  決めていますか」という質問に「当てはまる」と回答した子

  どもの割合が全国、全道を大きく上回っている。

 このことから、陸別町では1人1台端末が「個別最適な学び」を実現する学習ツールとして浸透していること、また話し合いで課題を解決するために協力し合える親和的な人間関係が「協働的な学び」の土台として根付いていることが明らかになりました。

 一方で、同調査からは以下の「課題」も認識しています。

 ・小中ともに、平日の家庭学習時間について、「30分より少ない」「全くしない」と回答した子どもの割合が

  全国、全道を大きく上回っている。

 ・小学校算数、中学校数学の記述式問題に対する平均正答率が全国、全道を下回っている。

 これらの結果から、陸別町では「主体的に学習に取り組む態度」の育成と、「自分の考えをまとめ、表現する力」の習得に重点を置いた授業改善に取り組む必要があると判断しました。
 これを受け、小中の教員は迅速に行動を開始しています。今年度、前述の小中一貫研修において研修課題を設定する際、約4分の3の教員が「自己決定」「自主的な学習」「主体性な学び」を研修課題として選択しました。この1年間を通じて、各教科で身に付けさせたい資質・能力を育む授業が、多くの教室で実践されると考えられます。

3 小中9年間を見通した各教科の系統表作成

 小中一貫教育を実りあるものにするには、「目指すべき15歳の姿」というゴールに向かって、小学校入学から中学校卒業までの9年間の教育課程を一連のものとして考えていかなければなりません。そこで当研究所では、各学年の各教科においてどのような資質・能力を身に付けさせるべきなのかを、小学校第1学年から中学校第3学年まで段階的に明記した「系統一覧表」を作成しています。令和6年度末までに算数・数学科、社会科、理科の一覧表が完成しており、今年度は国語科での完成を目指して作業を進めているところです。一覧表の作成業務についても、小・中学校の教員に随時情報提供し、各教科の教材研究に活用するよう促しています。

終わりに

 陸別町の人口は約2000人です。この町において、行政関係者や地域住民の皆さんは口を揃えて「子どもたちの存在は町の宝だ」とおっしゃいます。私も同感です。今後も、一人一人の子どもの「主体的な学び」を実現するための授業づくりを目指し、当研究所がその推進力となって「町の宝」を大切に育んでいきたいと考えております。

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