巻頭言(348号)

「原点と未来」

       十勝教育研究所 副所長 横山 一仁

 学習指導要領の改訂から7年がたちました。

 グローバル化や人工知能・AIなどの技術革新が急速に進み、予測困難なこれからの時代。子供たちには自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められます。

 これは、当時、新しい学習指導要領がスタートするに当たり、政府広報オンラインにてその説明がされた一文です。今、まさにこのような時代に直面していると感じているのは私だけでしょうか。

 学習指導要領は、時代の変化や子どもたちを取り巻く状況、社会のニーズなどを踏まえ、10年に一度改訂されていますが、数年前では考えられなかったような激しい変化が起きており、まさに時代を先読みしたものになっていることが分かります。

 このような状況の中、各学校では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改革がされていますが、その根幹を押さえているでしょうか。

 「よりよい教育課程を通じてよりよい社会を創るという目標を目指す」といった社会に開かれた教育課程の下、育成すべき資質・能力が明確になっていますが、この三つの柱の前には言葉が付いています。“生きて働く”知識・技能、“未知の状況にも対応できる”思考力・判断力・表現力等、“学びを人生や社会において生かそうとする”学びに向かう力・人間性等。これからの未来を生き、創り手となる子どもたちのためにも、この“ ”の部分を改めて大切にしなければならないと感じています。

 ですから、教員は、子どもたちが成人となる2030年の社会(Society5.0)やその先の未来社会を考え、子どもたちの指導に当たっていかなければならないのです。

 したがって、授業は、子どもたちが予測できない未来に対応するため、社会の変化を前向きに受け止め主体的に関わり合っていくために、受け身の暗記再生型の授業から、自ら学び共に学ぶ思考・発信型の授業に変えるための改革にならなければなりません。

 さらに、 2045年には、人工知能(AI)が人間の能力を追い越す「シンギュラリティ(技術的特異点)」が到来するとも言われています。第4期教育振興基本計画では答申が取りまとめられ、2040年以降の社会を見据えた教育政策のコンセプトとして「持続可能な社会の創り手の育成」を掲げ、未来に向け自らが社会の創り手となり課題解決に取り組む人材を目指すこと。また、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を挙げ、子どもはもちろん、教師や社会全体の活力向上を目指す姿勢が示されています。

 加えて、基本的な方針には、①グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進④教育DXの推進⑤計画の実効性確保のための基盤整備・対話が定められました。これを中心に学習指導要領が改訂されると予想されています。

 最大の教育環境は人、教育は人です。ですから、我々教育に携わる人が時には原点に返りその本質を再確認するとともに、未来社会にも目を向け、将来子どもたちがよりよい社会を創る人となるよう十勝教育研究所の使命と責任を果たしてまいります。

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